会員制リゾートの展望

これまでは、欧米型のタイムシェア・リゾートを中心に、そのコンセプトから発展の歴史、システムの内容、販売や運営の方法まで、リゾート・タイムシェアというビジネスの全体像を把握しようと努めてきました。
世界全体ではすでに5,000カ所以上のリゾートにまで成長した現在、そのシステムの特徴から日本のリゾート業界が学ぶべき要素も多いと思えるからです。日本の会員制リゾート業界の規模は、リゾート数と会員数において、一国としてはアメリカに次ぐ規模にまで拡大していると言われていますが、そのシステムは日本独自のもので、世界的なタイムシェア・システムとは共通点が少ないのです。
確かに、日本独自のリゾート・システムとして発展してきた歴史的背景や日本の風土と社会習慣に裏付けされたシステムではありますが、このままで発展して行けるかどうかは一考の余地があります。バブル崩壊の余波の影響で、日本人の価値観にも変化が現れ、それが消費行動や社会行動にも、かつてなかったような変化をもたらしています。消費行動が慎重になり、不要不急のものは買わなくなっています。会員制リゾートの市場も例外ではなく、苦境に立たされているリゾートの開発会社も少なくないと思われます。

 

いま世界中の、あらゆる業界の合い言葉となっているのが、「VALUE」です。つまり「価値観」のことで、あらゆる物に対して自分にとっての価値・意義がなければ、金額の大小には関係なく「買わない」という消費者の意識の事です。逆に、価値があると思う商品やサービスには、少々高いと思っても対価を支払うのです。バブル崩壊を期にして、日本人の価値観にもこのような変化が現れているのは多くの業界はすでに察知しており、企業は知恵を絞って商品やサービスのリエンジニアリングを行っています。
会員制のリゾート・クラブ商品には、消費者の求める本当の価値があるかどうか、業界自らが検証する必要があります。現状の商品システムと価格体系から判断する限り、日本のリゾート・クラブは作る側の論理が先行しており、使う側の満足感には十分な配慮が払われていないという感じを受けます。そうだとすれば、将来の展望を開くには、今こそ世界に目を向けて、欧米のタイムシェア・システムから学ぶべき事は、積極的に吸収する必要があるのではないでしょうか。リストラとリエンジニアリングは他人事ではなく、リゾート・クラブ業界でも生き残りの為に避けては通れない大きな関門といえます。